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結局「取引先の分散」なんてしなかったな

2018.11.25

こんにちは、萩ドットライフ()です。

「仕事は1つのクライアントに依存せずに、分散すること」「タマゴを1つのカゴに盛るな」というのが鉄則なのだそうです。理屈は理解できるのですが、僕の場合、むしろ定期的に集約するフェーズを作りながら、20年間のフリーランス生活を続けてきました。

「取引先を分散せよ」の理由

考え方はシンプルで「ひとつのクライアントからの売上に頼っていると、なんらかの事情で、取引が終了してしまったときに、売上がゼロになる」からなのですね。

もっともだと思います。
僕も、他のフリーランスや個人事業主、会社経営者と会話するときには「取引先は分散すべきだよね〜」と言いますね。

しかし、自分の過去を振り返ってみると、取引先が分散し始めると、必ず再度整理して、ひとつに集約しようととする「努力」を始めるのですよ。
セオリーに反していることは、重々承知しているのですが、そうした方が快適なのです。

途中でセオリー通り「売上がゼロになる」を経験しかかったこともあるのですが、どういうわけだか助かっているのですよ。

僕は今、50代半ばです。30代半ばから約20年間、フリーランスのWebデザイナーを続けてきました。
「セオリーなんて、クソくらえだよ」なんてことは言いませんが、「セオリーよりも、快適さを優先してきたのが良かったのかな」などと思っています。

クライアント1社に集中したほうが快適だったワケ

元も子もない言い方をすれば「集中するにふさわしいクライアントに巡り合ったから」だと思いますね。
運が良かったんですよ。

とあるマンションデベロッパーが僕のメインクライアントなのですが、宣伝広告の担当者も、販売担当者も、一部の例外を除いて、おしなべて常識的な方々なのです。
かつ、案件が常時発生する業種なので、仕事が切れないのですよ。

余談ですが、僕は、このクライアントと直接取り引きをしているわけではないのですよ。
ある制作会社と提携関係にあり、そこがクライアントと業務提携を締結しているのですが、そこの経営者も、とても常識的かつ優秀なのです。

僕としては、この制作会社にスケジュールを把握してもらいつつ、メインクライアントの案件を振り分けてもらう体制が一番ラクだったのです。

クライアント1社に集約することは、逆にメリットもあると思うのですね。

  • マンパワーを集中させることができる
  • スケジュール管理が容易
  • 継続的な受注が期待できる
  • クライアントの制作規定に精通できる
  • 長い取引により、人間関係を構築できる

などでしょうか。

危機の到来と回避

クライアント1社集中のメリットは「なにか起こったら、売上がゼロになる」というリスクとトレードオフの関係にあるのですが、実際に、そういう危機はあったのですよ。

数年前に、このクライアントが企業合併しまして、いっとき宣伝広告部門のパワーが合併先に占められていた時期があったのですよ。
そのときに2年間、提携業者から外されていました。

まさに「売上がゼロになる」に直面するのですが、

  1. クライアントの別の部門からの発注
  2. 新しい広告代理店からの発注
  3. 別業界からの接触

によって危機は回避されたのです。

1.クライアントの別の部門からの発注

ありがたいことに、宣伝広告部門が管理する提携業者から、僕たちが外されたことにショックを受けた方々がおられたようです。
指定業者でなくとも発注できる案件を回していただくことができました。

これは、クライアント1社に集中していたことによる効能だろうと思っています。
長い取引の中で、ある程度の人間関係ができていたので「え、なんで外されちゃうの?」と感じていただけたのだと思います。

2.新しい広告代理店からの発注

同業他社をクライアントに持つ広告代理店からの接触・発注がありました。
どうやら、僕たちが提携業者から外されたことを聞きつけて、接触して来られたようです。

3.別業界からの接触

古い知り合いから連絡があったのですよ。
あとから聞くと、僕がこれまでのメインクライアントを戦力外になったことを知っていたようですが、そのときは知らない素振りで「どうせ、請けてくれないよね」みたいな連絡をしてきたのですよ。
僕は、そういう状況だったので「ちょうど良かった、オレ今、無職なんだよ」と。
一時期、医薬品メーカーのiPadコンテンツを作っていました。MRっていう、薬品の営業の人が、医師の元に出向いて医薬品の説明をするときに使用するツールですね。

僕なりの逆説的な解釈なのですが、クライアント1社に集中していたことが危機を回避してくれたようにも感じるのですよ。
狭い範囲ではありますが「萩ドットライフ。○○の仕事を外されたって」という情報が回ったようなのです。

それまで、ほぼクライアント1社に絞ってて、他から引き合いがあっても「いや〜○○の案件で手一杯だから、やめときます」って断り続けてたので、「ということは今、萩ドットライフ、手が空いてるじゃん」って思ってもらえたってことなんじゃないでしょうかね…。結果論ですけどね。

そして、またひとつに

その危機は2年間で去ったのですよ。
僕たちが戦力外になっていた「元」クライアントの中の人たちが、再度、提携業者に押し込んでくれたようです。

再び「元クライアント」が「メインクライアント」になるのですが、上記の3つの危機を回避できた要因のうち、(1)は、少し数を減らしながら継続しているものの、(2)と(3)は、フェードアウト。またクライアント1社に集約されるようになりました。

(2)については、4〜5年続いたんじゃないでしょうか。提携関係にある制作会社としては、今でも取引関係を失っているワケではありませんが、僕個人は関係を断っています。
理不尽な要求が多いクライアントなので、僕としては距離を置きたいと感じたことと、一緒に組んでいた、広告代理店の担当者が退職されたことが大きな要因ですね。

(3)に関しても、担当者の退職が原因で関係が切れました。正直、この仕事はもう少し関わりたかったんですけどね。
人間関係のゴタゴタがあって、チームが空中分解しちゃった感じですね…。

こんな感じで、またもとのクライアント1社体制に戻って数年が経っています。
(他に細かいのがパラパラとあるので「ほぼ」なんですけどね)

僕は今、新規案件の受注を停止し、セミリタイア生活に突入しています。
このまま、運用案件の終了をもって、フリーランスのWebデザイナーとしてのキャリアを終えることになるのだろうと思います。

偶然起こった一時的な例外を除いて、ずっと「取引先の分散」に消極的だった20年でした。
理由は「クライアント1社に集約したほうが快適だったから」。

でも、もし他人に意見を求められれば「取引先は分散すべきです」って言っちゃうんでしょうね。

生まれた街「萩」の小さなひとつに還ろう。