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「友達価格」問題について考える

2019.09.16

こんにちは、萩ドットライフ()です。

「友達価格」問題…。デザイナーとかイラストレーター、フォトグラファーなどのクリエーター系のフリーランスにとっては「あるある」だと思うのですよ。ときには、友達じゃない人からもやってくる、不当な値引き、ヒドいときには無償(タカリ)問題です。

クリエーター系フリーランスにとっては、あるあるですよね

デザイナーなどという仕事をしていると「オレの名刺作ってくれない?」とか「知り合いの実家が○○店やってるから、ホームページ作ってあげてよ」みたいな話が定期的にやってきます。

ときには「手伝ってくれない?」と…。

その言葉の向こうには「友達なんだから格安でやってくれるよね?」とか「原価のない仕事だから、タダでやってくれるよね? 友達なんだもん」といった友達価格の要求が見え隠れします。

正直、もう30年近く前、会社にMacがやってきてDTPをはじめた頃は「コンピューターでデザインできるんスよ」ということを他人に言うのが嬉しくて、名刺くらいだったらタダで作ってあげてましたね。
「印刷代だけください」みたいな感じで。
設備の私的利用とか、ユルユルだったんですよ。「Macで制作」とかみんなにフンって思われてたようだし。

「友達価格」を要求してくる人って、ホントの友達ばかりじゃありません。

知り合ったばかりの人とか、知っちゃあいるけど人間関係構築できてない人から「うちの仕事をやれば、あなたの宣伝になる」とか「タダで腕を見てもらって、気に入られたら大きな仕事に繋がる」みたいなことを言われることも定期的にありました。

もし、あなたが「デザイナー」とか「友達価格」とかのワードで辿り着いた、駆け出しの同業者ならば気をつけてください「あなたの宣伝に」とか「大きな仕事に繋がる」とかって、絶対にありません。
後述しますが、仕事を断るのも「営業」です。

ただ、オッサンになると減ってきます。
僕は今50代半ばなのですが、外見的にしても、会話中の言葉の選び方にしても「ややこしそうな仕上がり」になってるからでしょうね。

その上、僕は今セミリタイア中なので、この「友達価格」問題と向き合うことはありません。
ちょっと思い出した、昔の思い出話なのです。

フリーランスは必ずしも「仕事を与えると喜ぶ」わけじゃない

「デザイナーやってんだ…。なんか頼める仕事あるよ」みたいなのって、たぶんマウンティングの一種なのだと思うのですよ。
もともと「発注者は受注者よりも上位にいる」と考えている人が、その関係性に当てはめようとしているのでしょうね。
善意だとしても、その背景には「仕事を与えると喜ぶ」という感覚が意識に中にあるんでしょうね。

たしかに僕は、仕事を与えられると喜ぶ生き物なのですよ。でも、それにはいろいろと前提条件があるのです。

僕はあくまでも発注者と受注者はイーブンの関係だと思っています。
そもそも「お客様がおっしゃってるのだから」というバカ上司を視界に入れたくないためにフリーになったような部分もありますし。

だから、こちらも「嫌なこと」「欲しいもの」をキッチリと伝えた上で、双方が「是非」となる仕事であって欲しいのですよ。

これまで、新しい人から連絡が来て仕事に繋がったケースって、まず先方が僕のやった仕事をいくつか知ってましたもん。
僕の知らないうちに、いろんな評価・検討をした上で話しかけてくるんですよね。

そして、その仕事で関わったクライアントなり広告代理店に接触して、僕の評判を聞いた上で「直接発注していい?」って仁義切ってから連絡してくる人も少なからずいました。
そしてそういう方(本人もクリエーターであることが多いんですけどね)は、きっちりと最初にお金の話をされるのですよ。

そこまで根回しされて「○○社の△△さんからの紹介で」ってアプローチされると、逆に断りにくいんですけどね…。

なので、僕の仕事を知らず、「これまでのデザイン・ポートフォリオ、どっかに掲載してる?」とも聞いて来ず、制作物の着地点とか仕事感についてのすり合わせもなく、いきなり「仕事あるよ」って言ってくる人の仕事は請けないようにしているのです。

だから、本当の友人が善意で、気を使って「知り合いのそば屋が、メニューを作りたがってたけど、言ってやろうか?」と繋いでくれようとしてくるようなケースもお断りしています。

経験上、かなりの確率で「友達価格」問題と向き合うことになるからです。

たぶん物理的な「モノ」がないからなのでしょうね。
「印刷代、いくらかかりました」「サーバー代、毎月これだけかかります」という要求に難色を示す人はいません。
ただ、「デザイン料」とか「制作費」に対しては、なかなか納得してもらえないのですよ。
「誰々さんの紹介だからお願いしたのに」「せっかくチャンスをあげたのに」と…。

そうなってはじめて「誰々さんはいくらだった。〇〇会社は、デザイン料なんか取らない」みたいな話が始まって、面倒くさいことになったりするのですよ。

デザインでメシを食うために、それなりの技術を習得するために学習を継続し続けてきているし、この案件に対しても熱量を持って取り組むのですけどね。
先方は「友達価格」が存在すると思っているようですが、僕の側に「友達対応」なんてあり得ませんから。

嫌なものを「イヤ」ということ、大切

もちろん、それなりの実績のあるクライアントの担当者の思いを意気に感じたり、ピンチを救出するために、激安もしくは無償で対応することなんて山ほどありますよ。

そうなるには、両者の間にそれなりのコミュニケーションと歴史が必要で、かつ担当者(個人)ベースですよね。

ちょっと世知辛い感じもしますが、もともと値上げ難く値下げ易いものなのですよ。
値下げクセがつくと、自分の首を締めるんです。値を下げるときには双方が「特別なことが起こった」と認識することが大切なのです。

…などと書いている僕も、フリーランスになった当時は、よくやらかしてたのですよ。
とにかく実績が欲しかったし、ここにフリーのデザイナーがいることを多くの人に知らせたかったのです。
地雷もたくさん踏みました。
「ウィン・ウィンで」とか「利益をシェアしよう」なんて言葉に乗っかって、1円も回収できなかったこともあります。
(参考:フリーランスになったころの失敗を記して、平成時代を後にしよう

クリエーター系の人がフリーランスになる。会社を設立するとき、自分のクリエイティブ能力にはそれなりに自信を持って行動するのですが、営業力とか経営能力ってゼロなんですよね。

いや、なんとなく分かって始めたつもりだったんですけど「これほどのものか」ってくらい弱いのですよ。
とにかく最初は、他人からデザインを頼まれるのが嬉しくて仕方ありませんでしたからね。

嫌なものを「イヤ」という能力を身につけるのと、「まともな仕事」がやって来始めるのって、ほぼ同時だったように思います。
どちらが「ニワトリ」で、どちらが「タマゴ」だったかは覚えていませんが「ああ、そういうものなんだな」と思ったことだけは覚えています。

カドを立てずに仕事を断るのも「営業」です

ちょうどその頃、仕事を断ることの重要性を強く感じてたし、それができるような状況にありましたからね。

  • この仕事は嫌です、請けません
  • この作業をするために素材を(期間を)ください
  • 作業開始前に金額的なことを決めましょう

などと、僕が相手にして欲しいことをはっきりと伝えることにしてから、少しずつ仕事も順調になってきたように覚えています。

逆に「プライベートでやってるサークルの名刺作ってくれる」みたいな以来はすべて断るようになりましたし、そう言ってくる人たちとも疎遠になりました。

おそらく、

  • 自分の仕事に自分で価格を付ける
  • その根拠を説明できて
  • 相手を納得させられる

能力を身につけることが、「友達価格」問題を解決するための第一歩なのだと思うのです。

そして、長いフリーランス生活の間にだんだんと「カドを立てずに仕事を断るのも『営業』なんだな」と思うようになりました。

この考え方って、とても大切で、まず、こっちは断ってるのに、粘着されると精神的に滅入るし、時間も使う。とにかく消耗するのですよ。
なので、断るときには、すんなりはっきり断りたい。

そして、断り方が上手くなると「できない/やりたくない」こと、「やってほしい」ことを躊躇したり、忖度したりせずに要求できるようになって、コミュニケーションがスムーズになるのですよ。

そして、仕事を断わられたことを「自分の人格が否定された」と解釈し、粘着してきたり逆上してきたりする人は、以降付き合っても得るものがありません。
やさしく、カドを立てないように「オレの視界に入ってくるな」的なことを伝えましょう。

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